町並みの最奥で出会う、一期一会の秋

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龍頭山 照蓮寺
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町並みの最奥で出会う、一期一会の秋

取材先

龍頭山 照蓮寺

住所

725-0022 広島県竹原市本町3-13-1

アクセス

竹原駅から徒歩14分

Introduction
 たけはら町並み保存地区の最奥、石段を登りきると視界のすべてが黄金色に染まります。そこは「龍頭山 照蓮寺」。境内一面に広がる黄色い絨毯を進んだ先には、池に寄り添うように静かに色づくもみじの赤。足を止めて、心ゆくまで見つめていたい景色です。

黄金の絨毯を抜けて赤の奥庭へ

 敷き詰められた黄金色の葉をサクサクと踏みしめて、渡り廊下の低い梁の下を身をかがめてくぐり抜けます。ふっと頭を上げると、さっきまでの黄色とはまったく異なる世界がそこに…。静かな池の周りをつややかなもみじが彩り、澄んだ青空と黒い瓦屋根にもみじの赤がくっきりと際立っています。やわらかく満ちていた黄色の世界から、今度はひそやかに静かな赤へ。数歩歩くだけで目の前の季節が深まります。

 「ここは座って見る『座観式庭園』なんです」。住職の声に促され、縁側に座って庭を眺めてみます。目の前に広がる池は、江戸時代に裏山の土砂崩れを防ぎ、水を逃がす治水のために谷の地形を生かして造られたもの。実用から生まれたその池や石の配置には、いつしか仏教の宇宙観が重ねられました。そんな話を聞いてからまた庭を眺めると、ただ美しいと思っていた石や起伏が少し違って見えてきます。いつの間にか庭の物語を読んでいるようです。

 庭のもみじの由来を聞いてみると、「この木も、もともと植えたものばかりじゃないでしょう。種が飛んできて自然に芽吹いたものなんじゃないでしょうか」と住職。どこからか風に乗って届き、この土に根を下ろし、守り継がれてきた小さな命。何十年もの歳月が重なり合い、いま目の前の美しい秋をつくっています。ただ座って、目の前の庭と過ごす。そんな何もしないぜいたくな時間が、ここにはあります。

そっと約束する、「また来よう」の秋

 照蓮寺は、かつて小早川家の学問所だった禅寺「定林寺」を起源とする歴史あるお寺。一度は荒廃したものの、寺を愛する町の人々の手で慶長8(1603)年に再興されました。江戸時代には頼山陽ら頼一族もここで筆を執り、学問に励んだとも伝わっています。境内に残る墓所や古文書に加えて、国重要文化財の高麗鐘も安置されています。住職がいらっしゃるときには、その鐘の姿を間近に拝むこともできます。

 境内を黄色に染めつくす大イチョウ。その圧倒的な生命力の秘密は、木が背負ってきた「ある役目」にあるのかもしれません。「イチョウは葉の湿気が多く、類焼を防ぐと言われています。お寺を守るために植えられてきた合理的な理由があります」と住職。照蓮寺は火事に遭っていないものの、万が一の火災から町を守る防火樹として大切にされてきました。ごつごつと太い幹から新しい枝を伸ばす姿に、この先も町を見守り続ける頼もしさが宿っています。

 見ごろは11月中旬。「イチョウが少し早く色づいて、それからもみじ。でも最近は時期を読むのが難しくなった」と住職。急な寒さや強い日差しで、鮮やかに染まる前に葉が落ちてしまう年もあると聞けば、目の前の一瞬がより愛おしく感じられます。まさに一期一会の景色です。境内を出るころにはふっと肩の力が抜けて、心も軽くなっているのを感じるはず。振り返れば温かな黄金色の景色。「また来よう」と、来年の訪れを約束したくなります。

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