03 たけはら町並み保存地区
瓦屋根が連なる歴史的な建物が並ぶ、たけはら町並み保存地区の俯瞰

たけはら
町並み保存地区

白壁と飴色の趣のある格子窓が続く通り、しっとりと落ち着いた本瓦葺きの屋根。

重要伝統的建造物群保存地区に選定された「たけはら町並み保存地区」に足を踏み入れると、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚に包まれます。

「安芸の小京都」とも称されるこの「たけはら町並み保存地区」は、ただ古い町並みが残っているだけではありません。ここは、かつて瀬戸内海有数の「塩」と「酒」の生産地として栄華を極めた歴史が、今もなお色濃く息づく場所。

なぜこれほどまでに美しく、重厚な町並みが生まれたのか。その秘密は、この町を日本遺産たらしめた「塩」と、その塩を全国に運んだ「北前船」の物語に隠されています。

まるで時が止まったかのようなレトロな風景の中で、この町を築き上げてきた人々の息吹を感じる旅に出かけましょう。

日本遺産が語る「塩」と「富」の物語

この見事な町並みは、江戸時代に「入浜式塩田」による製塩業で財を成した「浜だんな」と呼ばれる豪商たちによって築かれました。そして、彼らに莫大な富をもたらした原動力こそが、「北前船」だったのです。

江戸時代の竹原の町や塩田の様子を描いた古い屏風絵
屏風は、1800年頃の竹原下市(現在の町並み保存地区の周辺)を描いた屏風。竹原下市の西側(屏風では下側)に本川が瀬戸内海(屏風の右側)へと流れています。
  • 北前船が運んだ「竹原の塩」

    北前船とは、江戸時代中頃から明治にかけて、大量の荷物を積んで大阪と北海道を日本海周りで往復していた商船群のこと。竹原は、その重要な寄港地でした。

  • 最大の顧客、最大の運び手

    北前船の商人たちは、竹原で主要産品であった「塩」を大量に買い付けました。竹原の塩は、北前船によって遠く北海道にまで運ばれました。

    今の新潟県糸魚川市(北前船寄港地)へ塩が到着した際には「タケハラが来た」、塩を購入することを「タケハラを買う」と表現されるほど塩の代名詞として全国に名を馳せました。「たけはらの塩」はブランド化が図られていきました。

    寛政7年(1795年)に津村淙庵が著した随筆集『譚海』の中で、「北廻りの船は、安芸の竹原に船を寄せて塩を買い、北国で販売するのが、いつものことだ」と評されるほど、北前船との塩の取引で栄えました。

  • 塩が富を生み、富が町並みを生む

    「浜だんな」たちは、この北前船交易を基盤に「塩問屋」として、あるいは「酒造家」として、その財を築き上げました。そして、その豊かさを投じて意匠を凝らした豪華な屋敷や神社仏閣を次々と建設したのです。

現在の重厚な町並みは、まさに「塩」と「北前船」がもたらした繁栄の生きた証であり、そのストーリー全体が日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」として認定されています。

日本遺産を深く知る - 北前船が残した5つの記憶

竹原の日本遺産ストーリーは、以下の5つの「構成文化財」によって、当時の交易の活気と繁栄を具体的に物語っています。

1.竹原市竹原地区伝統的建造物群保存地区

伝統的な建築が連なるたけはら町並み保存地区の石畳の通り

繁栄の象徴としての「町並み」

今、私たちが歩いているこの重厚な町並み全体が、最初の構成文化財です。製塩業を基盤に、「浜だんな」たちが北前船交易による莫大な富を投じて形成した、繁栄の象徴そのものと言えます。

2.旧吉井家住宅(非公開)

広い敷地と立派な門構えを持つ旧吉井邸の外観

交易の最前線「塩問屋」

邸宅は、単なる豪邸ではなく「竹原一の塩問屋」でした。北前船の商人(船乗り)たちが宿泊した記録も生々しく残されており、ここで商談や情報交換が行われた、まさに交易の最前線だったのです。

3.常夜灯群

海辺の石階段の脇に立つ、歴史ある石造りの常夜灯

海の道しるべ

町並み保存地区から港側へ少し歩くと残されている「常夜灯」。これらは、塩を積みにやってくる北前船が夜間でも安全に入港できるよう、暗い海を照らした「海の道しるべ」です。当時の港の活気を今に伝えます。

4.市立竹原書院図書館資料群

年代を感じさせる、墨で文字が書かれた古い和綴じの本

繁栄の「記録」

当時の繁栄を裏付ける貴重な「証拠」が、市立竹原書院図書館に所蔵される古文書群です。北前船の商人たちとの交易記録や、塩がどれだけ売買されたかを記す販売量などが克明に残されており、竹原と北前船の密接な関係を解き明かしています。

5.紙本著色竹原絵屏風

江戸時代の竹原の町や塩田の様子を描いた古い屏風絵

繁栄の「絵図」

1800年頃、まさに製塩業と北前船交易で竹原が最も繁栄していた時代の町並みを描いた絵屏風です(現在は市立竹原書院図書館所蔵)。当時の活気ある人々の暮らしや、連なる商家、港の様子が視覚的にわかります。まさに「時が止まった」かのような現在の町並みが、この頃から変わらずに続いていることを示しています。

“レトロ”を巡る - 町並み散策ハイライト

歴史を知ると、散策の楽しさも倍増します。
ノスタルジックな風景の中、必ず訪れたい見どころをご紹介します。

1.【絶景】京都・清水寺の舞台を模した「西方寺・普明閣」

高台から町並みを見下ろす、舞台造りの建物「普明閣」とその周辺の景色

町並みを見下ろす高台に建つ普明閣は、この地区のシンボル的存在。京都の清水寺を模して建てられた舞台造りが特徴で、ここから見下ろす町並みの眺めは圧巻です。「安芸の小京都」と呼ばれる所以を、その景色が物語ってくれます。

2.【建築美】豪商の粋を訪ねる「豪邸建築」

旧吉井家住宅以外にも、「浜だんな」たちが残した屋敷は、当時の繁栄ぶりを今に伝えています。

青空の下に佇む、立派な瓦屋根を持つたけはら町並み保存地区の商家
歴史を感じさせる木造建築の門構えと、手入れされた庭の木々
黒塗りの壁と格子窓が印象的な、二階建ての古い町家
なまこ壁が美しい蔵と、それに続く白壁の塀
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旧松阪家住宅
  • 旧松阪家住宅

    製塩業で財を成した「浜だんな」の邸宅。唐破風の流れるような屋根と、華麗な菱格子の塗り込め窓は必見です。

  • 旧森川家住宅

    こちらも塩田経営で栄えた名家の住宅。大正時代に増改築された質の高い和風建築が特徴です。

  • 旧笠井邸

    「たけはら町並み雛めぐり」の会場をはじめ、様々なイベントの会場としても活用されています。

  • 旧光本家住宅

    江戸時代に建てられた「復古館」の離れ座敷。後年光本家が居住し、後に竹原市に寄贈された建物です。

3.【発見】家々の表情「竹原格子」を探して

木製格子の装飾パーツ。木材を曲線的に切り抜いた繊細な細工
木の格子越しに、緑色の幾何学模様のタイルが見える意匠
細い木材を緻密に組み合わせた、伝統的な格子の装飾パネル
町家の外壁に取り付けられた、木製の出格子のディテール
暗闇の中で浮かび上がる、竹筒から漏れる「竹灯籠」の幻想的な明かり。顔のような愛嬌のある模様が切り抜かれている
格子窓の前に飾られた、一輪挿しの竹筒に生けられた椿の花
ひし形状に木材を組んだ竹原格子のクローズアップ
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町並みを歩いていると、家々の窓を彩る「格子」のデザインが驚くほど多様なことに気づくはずです。

「竹原格子」と呼ばれるこれらの格子は、出格子、塗格子、虫籠窓(むしこまど)など種類も様々。中には「幸せのハート」や「手裏剣」のような遊び心あふれるデザインも隠されています。お気に入りの格子を見つけながら歩くのも、この町ならではの楽しみ方です。

4.【物語】あの作品の舞台へ

このレトロな風景は、数々の物語の舞台にもなりました。

石畳の道に面して建つ、左右対称の美しい屋根を持つ歴史的建造物の全景
軒先に青い暖簾が掲げられた、格式高い寺社または商家風の建物。しめ縄が飾られている
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竹鶴酒造

竹原時間をもっと深く - 立ち寄り・体験スポット

ただ歩くだけでなく、 “竹原時間”に溶け込む体験はいかがですか。

竹細工の体験風景。職人さんが手取り足取り教えてくれる様子

まちなみ竹工房

「竹の町」竹原ならではの竹細工体験ができます。職人さんに教わりながら、世界に一つだけのお土産(人気の「四海波かご」など)を作ってみませんか。

石造りの地蔵様

おかかえ地蔵

諸説ありますが、願い事を心に念じながらお地蔵様を抱え、想像より軽ければ願いが叶うとか。ぜひ挑戦してみてください。

町家を改装した、レトロな雰囲気のカフェの内観

町家カフェで一息

歴史ある建物をリノベーションしたカフェや食事処も点在しています。風情ある空間で、ゆったりとした時の流れを感じながら休憩するのも格別です。

青空と豊かな緑の山を背景に立つ、瓦屋根を取り入れた和モダンな外観の「たけはら海の駅」の建物全景。

散策の拠点「道の駅たけはら」

散策を始める前に、まずは情報収集を。観光案内所も併設されており、町の歴史や見どころを詳しく知ることができます。

町並み散策には観光ガイドがおすすめ

歴史的な蔵や町家が立ち並ぶたけはら町並み保存地区の通りで、ガイドの説明を聞きながら一眼レフカメラなどで熱心に撮影を楽しむ観光客のグループ。

歴史文化を深く知るには町並み観光ガイドがおすすめです。
所要時間90分~120分ほどの散策で、地元観光ガイドが美しい町並みを詳しくご案内します。
2日前までに予約が必要です。
基本的には1名のガイドにつき約20名様までご案内できます。
(猛暑を考慮し、8月中の本ガイドは休業の予定にしております)

【申込先】たけはら観光ガイド会(道の駅たけはら内)
TEL:0846-22-7730
FAX:0846-22-1201
ガイド料:ガイド1名につき2,000円(税込)

  • 第3水曜日は休館日です。

さいごに

時が止まったかのような静かな通り、精緻な格子の奥に隠された豪商たちの夢、そして海を越えた「塩」の物語。

たけはら町並み保存地区は、訪れる人を優しく包み込み、日常を忘れさせてくれる不思議な魅力にあふれています。

あなたもこのレトロな町で、自分だけの「時」を見つける旅に出かけてみませんか。

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